歯のリテラシー 歯科技工士のしごと

国民皆歯科検診におもうこと

1年に1回、必ず健康診断を受けていると思いますが、歯科検診についても3~5年を目途に同じように受けることになるようです。

とても素晴らしいこと。

歯を守ることは健康的な体を維持することにつながります。

老後100年時代と言われるなかで、健康体であることは必須。通院だけで1日が終わってしまうような老後を過ごす可能性もおおいにありますから。

ただ、元歯科医療従事者として思うことは、検診を受けるだけでは不十分ということ。

おそらく今のままでは、全く意味のない制度で終わる可能性が高いと考えています。

その理由は大きく2つ。

  • 歯科医療現場の環境が悪い
  • 歯科の知識が乏しすぎる

制度を作るのであれば、これらもしっかり見直さないと無用の長物で終わるでしょう。

あくまで私個人の見解ですが、それを感じている関係者も少なくないようです。

どういうことなのか、詳しく解説してみたいと思います。

国民皆歯科検診がムダになる理由

歯科医療現場の環境が悪い

先日、Twitterで歯科医のスギウラさんのつぶやきを拝見しました。

材料価格の値上げで経営が苦しいから、歯科技工士が作って納品している銀歯や入れ歯の値下げを要求している歯医者がいるそうです。

しかし、政府は5月に緊急対策として材料価格の見直しを行っています。

これによって、歯医者は材料価格の値上げ分を診療報酬としてもらうことができるようになっているので一安心のはず。

ところが材料価格の値上げに便乗して、歯科技工士に値下げを要求して利益を確保しようと考える歯医者がいるということ。

ちょっと恐ろしくなりました。

ちなみに、歯科技工士は銀歯、入れ歯など保険のきく技工物を作ると、技術料として保険点数の概ね7割をもらえることになっています。

ところが、実際はこちら。

歯科技工士の50%以上が、本来もらえる報酬をもらえていないという事実が浮かび上がります。

ただでさえ歯科技工士の労働環境は過酷です。

3人に1人が週に81時間以上働いていてい過労死ラインをはるかに上回っているんですね。

5日勤務だとして1日16時間勤務です。ちょっと衝撃的ですよね。

これに追い打ちとかけるように、先ほどの更に値下げを要求されるという始末。

そりゃ、泣きたくなりますよね。

私も泣きたくなりますが、これが日本における歯科技工士の現実です。

医療系の国家資格化のに絶滅危惧種らしいです… 

そして、歯科医療の現場がこのように診療報酬で一喜一憂していて、医療に専念できる環境にないという悲しい現実。

検診を義務化するのなら、こういうところまで見直さないと、現場の負担が増えるだけになってしまいますね。

歯科の知識が乏しすぎる

健康診断を受けても、よほどのことがない限り、まぁ何とかなるだろと考える人もいるはず。

ましてや歯科検診なんて二の次、三の次くらいではないでしょうか。

検診しても「まぁ、痛くなってからでいいでしょ」、「痛くなってから行けばいいじゃん」というのが日本人の一般的な感覚。

でも、痛くなってからでは手遅れ。

神経に達するほど虫歯が進行しているのですから、大掛かりな治療、最悪は抜歯にもなりかねません。

日本人は、こういった歯の知識が圧倒的に不足しているんですよね。

かくいう私も、歯科技工士の資格をとるために専門知識を学んだはずですが、歯医者へ通うことはせずほったらかしでしたし。

こんな感じですから、歯科検診を義務化したところで、治療に通う人がどれだけいるのか…

期待できそうもありません。

まずは歯に対する間違った知識を根本的に直すことが先決だと私は考えています。

それが出来ない限り、いくら検診を受けようが日本人が歯の悩みから抜け出せることはないでしょう。

きっと10年後も同じようなことを繰り返しているんだろうなと感じています。

なんせ日本人は変わることが嫌いですから。こんな半端な方法で何か変わるとは到底思えません。

ただ、少なくとも私の周りの人たちやこのブログを見てくれる人たちには歯で困ったり悲しい思いはしてほしくありません。

私の知りうる限りの情報を提供して、歯を守ってほしいと考えています。

正しい知識を身につけて、自分の歯を、健康を維持してほしいですね。

まとめ

国民皆歯科検診については、おそらく機能しないだろうと考えています。

その理由は、

  • 歯科医療現場の環境が悪い
  • 歯科の知識が乏しすぎる

あくまで現状での考えですが、今の日本人の知識レベルでは検診をしたところで大きな変化は起こらないでしょう。

小さいころから教えられてきた間違った知識をアップデートしない限りは…

そこにきちんと力を注ぐことができれば、国民皆歯科検診は意味をなすことが出来る可能性はあると思います。

皆さんがこれから何十年と付き合っていく「歯」ですから、正しい知識をもって大切にしていってほしいと思います。

その足掛かりとして検診を受け、自分の口の中の状態を知ることはとても素晴らしいこと。

これを見た人が、少しでも現状を知ってもらって、歯に興味を持ってもらえたら嬉しいです。

健康資産を大切にして明るく楽しい未来を迎えましょう。

To Be Continued...

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